たびのあとさき

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朝日新聞・吉田証言報道 元凶説の真偽、検証の原点(2014年9月22日放送「のりこえねっとTV」)

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韓国で、「慰安婦」は公にどう語られてきたのか。

私が調査を始めたのは、もちろん、2014年8月5日付・朝日新聞の「吉田証言記事の取消」を含む検証記事と、その後巻き起こった強烈な朝日バッシングがきっかけだった。ただ最初は、「記事翻訳・監修者」時代からの癖で、自分の目で確かめてみたかっただけだった(まさかこの後、1年半以上、調査に没頭することになるとは…)。

しかし、調べ始めた途端に、「これは完全におかしいぞ」と気がついた。

何しろ、最初にざっと過去記事をチェックした段階で、慰安婦「強制連行」イラスト入りの記事、それも1963年という日本での「慰安婦」新聞報道よりはるかに早い時期のものが出てきたからだ。

↓ そのイラストは、後に週刊金曜日の表紙を飾ることになった。

 

調べた内容を元に、「『朝日元凶説』は事実関係に反している」と私が最初に「発表」したのは、のりこえねっとTV、2014年9月22日放送分ミニコーナーでのことだった。30分ほどの短い時間なので、吉田証言報道に絞り、その前後の時期のみについて手短に話した。しかし、この時のレベルの内容すらまだ世間には浸透していない。

私に発信力があれば、日本政府・外務省が国連女性差別撤廃委員会で、「朝日元凶説」を振りかざして恥ずかしい強弁を行うこともなかったのではないかと、自分の非力さが嘆かわしい。

 

というわけで「朝日元凶論」への最初の疑問提起、未見の方はぜひ。

(↓ YouTube動画・冒頭30分

https://www.youtube.com/watch?v=M1YPnjLbHNI&feature=youtu.be&t=2m46s

(なお、ここでは、成り行き上「吉田証言への本格的な注目は北海道新聞記事がきっかけ」という点が強調するかのような展開になっていますが、もちろん本質はそんなことではありません。当初80年代に紹介された際に、たいして注目を集めず、忘れ去られてしまうほど、吉田証言の影響そのものが、微々たるものだったのです。また1991年は、あらゆる「慰安婦」に関する言説がいったん再注目された時期で、吉田証言はその数ある中の一つに過ぎません)

 

上記番組中、私の説明を受けての、中沢けいさんのコメント。今改めて聞くと、感慨深い。


安田(浩一)さん、総理まで同じ事(朝日元凶説)を言うのどう思います?

外務省はどういうブリーフィングしているのか一回聞かせてもらいたいです。今の吉方さんの話を聞いて、通常の理解力があれば、朝日が大々的にやって世界中にデタラメを言いふらしたということにはならないと、だいたいの方におわかりになると思うんですよね。この程度のブリーリングをやってないんでしょうかね、総理に。

 

ところが外務省は、総理に「この程度のブリーフィング」してウヨ史観をただすどころか、官邸に同調し、国際社会に政府の公式の立場として「朝日元凶論」を訴え始めたのだから、世も末だ。

こうした現状だけに、同問題は、まだまだ世に問うていかないといけない。情けないことだが、今の日本社会の空気は「歴史認識以前」、入り口にも立てないほどの倒錯ぶり。こんなことでは「慰安婦」問題の本質的な議論など、出来るはずもない。

なにより、事実関係を等閑視した一方的バッシングの横行と、それによる言論の萎縮は、間違いなく日本のマスメディア史における大きな汚点。看過するわけにはいかないと思うのである。